sugarless time

甘く切ない80年代、甘くない現在の興味のあること中心に綴ります。

スリッパ文化がもたらしたもの

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さとう310さんによる写真ACからの写真

 

 

www.sugarless-time.com

ちょっと前に『靴を脱ぐ?脱がない?』について

記事を書きましたが、その時から疑問に思っていることが

あったのでそこそこ調べました。

それが『スリッパ』についてです。

  

スリッパとは

こんにち日本の多くの住居でも玄関で靴を脱いで、

スリッパに履き替えるという生活様式がよく見受けられると

思うのですが、これっていつから?って思いませんか?

だって、西洋文化が日本に入ってくるのは江戸末期からですよ。

本格的流入は明治時代になってから、

さらにそれが加速するのは終戦後ですよ。

 

けれど明治時代に日本に文明開化をもたらしたのは

まぎれもなく『靴を脱がない文化圏』の国々です。

 

ユタ州に短い期間ですがホームステイ経験のある妻に確認すると、

靴は脱がないし、スリッパなんてなかったとの回想による返答。

 

えっ!?じゃあ、スリッパってどこから来たの?

 

いつものようにウィキペデイアで調べます。

先ずは英語版で確認・・・

en.wikipedia.org

夏用のスリッパなみに薄くて軽い情報しかありません(笑)

 

日本語版はというと・・・

ja.wikipedia.org

珍しく英語版よりは若干記述が多いです。

 

ウィキペデイア日本語版にある記述

また1867年には、福沢諭吉が著書『西洋衣食住』で欧米の「上沓」

「スリップルス」を紹介している。

出典:スリッパ - Wikipedia

から『スリップルス』で検索すると一番最初に引っかかったのが、

昭和53年に発表された昭和女子大学生の卒業論文抜粋。

現在使われている普通のスリッパは外国人の為に日本人が考案した紛れも無く国産の品であり昭和30年(1955?)頃から本格的に普及した履物である。

出典:http://www.futabakogyo.com/rekisi.htm

 

さらに調べると『東京都立皮革技術センター』に1997年に発行された

日本はきもの博物館日本郷土玩具博物館97年度年報」の抜粋にたどり着いた。

筆者は当時「日本はきもの博物館学芸員」だった『武知邦博』さん。

www.hikaku.metro.tokyo.jp

内容がけっこう興味深いのでいくつか引用する。

大多数の日本人には、スリッパが日本的なはきものという認識はない。一体スリッパはどこの国のはきものなのだろうか。

 

スリッパを日本ではじめて作ったのは、明治初年、東京で仕立屋を営んでいた徳野利三郎だと伝わる。当時はまさに開国の時代であり、近代化のために西洋人が来日していた。その頃の日本には今のホテルのような西洋的な宿舎は充分ではなく、旅籠や寺社が宿舎になった。ところが、西洋人にはシャワーの時やベッドの中以外に靴を脱ぐ習慣はなく、人前で靴を脱ぐなどということは考えられないことだった。結果、畳敷きの宿舎でも玄関で靴を脱がずに上がってしまう。これでは室内が汚れてしまうし、畳も痛んでしまう。この問題を解決するべく、西洋人からの注文を徳野が受けたのである。

 

いくら住環境や生活習慣が洋風化しても、家に帰るとはきものを脱ぐという習慣が残ったからである。靴文化は玄関という関を越えられなかったことに今日のスリッパの広まりがある。

出典:http://www.hikaku.metro.tokyo.jp/Portals/0/images/shisho/shien/public_2/126_4.pdf

日本で使われている『スリッパ』は外国から入ってきたものではなく、

純国産品であることが解ります。

 

スリッパが日本的なものを象徴する面白い記事を見つけたので紹介します。

アフリカ系民族で初めて日本の大学(京都精華大学)の学長となった

ウスビ・サコさんのコラムなのです。

ja.wikipedia.org

web.sekaishisosha.jp

タイトル通り「日本はスリッパが多すぎる!」ことについて、

それが悪いとは言ってはいないのですが、日本人には当たり前でも、

日本に訪れた外国人にとっては当たり前ではないという話で、

それについての解決案で締めくくっています。

  

  

トイレ用スリッパ

そしてもうひとつ気になったのがトイレ用スリッパ、

ルーム用スリッパ以上に一般的となっているトイレ用スリッパ。

 

トイレ用スリッパの起源について調べてみたが、

まったくといっていいほど情報がない(涙)

起源ではないが『愛媛県生涯学習センター』にヒントとなりそうな

記載があったので引用する。

また、トイレについては、「はねる」「こぼれる」ことによって汚れやすい、それこそ「ご不浄」と呼ばれた場所として、その床は居室や廊下部分より一段低い、不潔な床として意識され続けてきたことが履物を置く背景にあったと指摘している(31)。そのためスリッパが普及する以前の明治時代にも専用のわら草履(ぞうり)や下駄がトイレには置かれ(32)、それが今日では形を変えてスリッパに変化しているのである。

出典:データベース『えひめの記憶』|生涯学習情報提供システム

引用文中にある31、32も参考引用文献のナンバリングです。

31:住友和子編『日本人と住まい① 靴脱ぎ』光琳社 1996

32:E・S・モース 斎藤正二・藤本周一訳『日本人の住まい』八坂書房 2004

住友和子さんの『日本人と住まい① 靴脱ぎ』も興味深いですね、

購入は難しいようですが、大学などの図書館にはあるようです。 

ci.nii.ac.jp

『日本人の住まい』は現在でも購入できるようです。

 

昔からトイレ専用の草履や下駄を日本人は使用し、それが現在の

スリッパに変わったことがうかがえ、

また科学的な根拠もなくトイレは特別な場所とされてきたようです。

 

現代ではそれを科学的に検証することも容易となり、

下のリンクではトイレと食中毒の関係について注意を促しています。

www2.kenko-kenbi.or.jp

トイレでスリッパを履き替えない国の人達、まして家に入る時に

靴を脱がない国の人達は当然トイレにも靴を履いたまま入りますし、

トイレから出たあともその靴で家の中で過ごすと思うのですが・・・

こうやって考えていくと『新型コロナウイルス』の感染者数は、

各国々の日常生活と密接に繋がっているように感じます。

 

外食産業においても昔は玄関先(入口)で靴を脱ぐというシステムの

店は多くなかったと思いますが最近はよく遭遇します。

そして、そういう店はトイレを利用する場合はトイレ用のスリッパ、

もしくはサンダルに履き替えますよね。

今まではただ『面倒くさい』と思っていましたが、

こういうご時世になって改めて考えると「実に衛生的」です。

細かいこというとスリッパ(サンダル)は日々除菌しているのか?

などと思う人もいるかもしれません諸外国と比べてください。

日本で当たり前と思っていることが諸外国と比べるとだれだけ

衛生面で機能しているかということを!?

 

明治時代に日本の生活様式に合わせて作られた『スリッパ』は、

靴を脱ぐという生活様式にくわえて、さらに衛生面で大きな

影響をもたらした大発明のような気がしてなりません。

 

なおスリッパは自ら除菌するわけではありません(笑)

面倒でもまめなお手入れを心がけましょう。

 

もっと話の内容を広げられるテーマなのですが、

いつになく真面目なのこと書いているので疲れた(笑)

おりをみて追記したいと思います(汗)

 

最後までお付き合いありがとうございます。 

 

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