今週のお題「最近おもしろかった本」
先週のお題「最近おもしろかった本」
出典:「明治」という国家〔上〕 (NHKブックス) | 司馬 遼太郎 |本 | 通販 | Amazon
司馬遼太郎という名前だけで、尻込みしてしまう人も多いかと思います。
私はまったくそんなことなくて、今まで多くの司馬遼太郎作品を読んできましたが、1994年に発売された『「明治」という国家(上下巻)』については読んだことがなく、発売から四半世紀を経て初めて読んだんですけど・・・
なぜ発売から四半世紀も経過したここまで読まなかったかというと、本書が長編歴史小説でなかったから。
これは私だけかもしれませんけど、小説って内容ももちろん大事ですけど、長編というだけで読んでる時もなんか挑戦してるというわくわく感もあるし、読み終わった時の達成感も短編にないものがあるんですよね、ゆえに今まで読まなかったんですけど、もっと早く手にしていればという気持ちです。
なぜ発売から四半世紀も経過したここで読んだかというと、幕末期の人物で私がもっとも興味があるし、世間にも認知して欲しい『小栗(上野介)忠順:おぐり(こうずけのすけ)ただまさ』について司馬氏が本書で『小栗上野介忠順』を『明治の父』とまで高く評価している旨の記事を目にしたから。
多くの人が『小栗上野介忠順』を知らないと思いますので、凄く雑に説明すると、幕末期の徳川幕府の幕臣であり忠臣であり、1867年の「大政奉還」、翌1868年の「鳥羽伏見の戦い」と同年に討幕軍に捉えられ斬首となり生涯を終えるのですけど、生前に残した功績はまさに『明治の父』と評されて然るべき人物なのです。
ちょっと興味をもたれたなら、ウィキペデイアでさらっと理解を深めてください。
ネタバレになるので多くは書きませんが、『小栗上野介忠順』についての内容も期待通りのものでしたが、冒頭にも書いた通りで司馬遼太郎という名前だけで尻込みしてしまう方もいるとは思いますが、本書は司馬氏が明治という時代をご自身の経験や知識を口語体でつぶやいたものを文字におこした趣で楽しめます。
幕府側の小栗を賞賛するということは、倒幕側の『西郷隆盛』や『坂本龍馬』、幕臣でありながら戦わない判断をした『徳川慶喜』、『勝海舟』などを小栗と対比する形で凡人である私は批判するのかと期待してたんですけど、そんなことはありませんでした。
そして明治という時代についても勉強にもなりますし、明治という時代を起点にその前後についても勉強にもなれます。
参考までに面白かったものをふたつだけ挙げておきます。
ひとつめは日本という国は今でこそ少子高齢化で人口は減少しまくってますが、20世紀まではヨーロッパの先進国に比べて飛躍的に人口が増えており、その要因は主食が麦と米の差であるという話。
耕作面積に対しての収穫量は米のほうが圧倒的に多くて、それがヨーロッパ諸国より日本のほうが人口増加につながったという内容。
これはちょっと興味のある内容なので、いずれ主食と人口の関係を数値化してさらに可視化したくなりました。
そしてもうひとつは明治時代以前に日本に国民は存在しなかったという話。
今の世の中では当たり前のように私達は日本国民という認識を持っていますけど、江戸時代までは一般の人々にとって、国というものは存在せず、あるとしてもせいぜい藩(今でいえば都道府県)であって、『お国のため』なんて思考は明治時代以降という話も、ちょっと日本史に詳しければそう言われるとそうだなとなるんですけど、考えてもみなかったことなので新鮮でした。
そんな話が時折脱線しながら書かれています。
上下巻といっても各巻200頁程度なので、活字嫌いの人にも苦にはならないように思えますのでお薦めします。
さらに内容を詳しく知りたければ以下のレビューが参考になると思います。
難しい内容でもありませんし、読み易いし、本当にタイトルにあるようにちょっと賢くなった気にもなれるので、ぜひ読んでみて欲しい作品です。
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