2022年も終わりに差し迫った12月28日に大方の予想通り、次期サッカー日本代表『森保』さんの続投が発表されました。
個人的には過去記事にも書いてますが、現在のサッカー日本代表の置かれた環境を考えるとベターだと思っていますが、森保さん本人だけじゃなく、森保さんご家族のこの4年間(特にワールドカップ予選が始まってから)は大変な負担だったでしょうから森保さんの意志で続投はないかと思っていたので、けっこう意外な感じがしました。
⇩⇩過去記事はこちら⇩⇩
協会も懐具合とかリスクをかけたくないといった消極的な部分もあったと思いますけど、繰り返しますが現在のサッカー日本代表の置かれた環境を考えると外国人監督というのはサラリーの問題、代表監督としての稼働時間の縮小問題、それにプラスしてコミュニケーションの問題を考えると博打にも似てるように思っています。
森保さんはベターだとは思いますがベストだとは思っていません。
ただ、ベストを追い求めるということはバッドとの背中合わせであり、懐具合を鑑みればバッドになり兼ねない選択はなかったように思っています。
ここで私が懸念する稼働時間の縮小について数値を示しておきます。
ヤフコメレベルで語られる戦術論がいまだに古くは『ハンス・オフト』や『フィリップ・トルシエ』の時代のようにたっぷり代表に時間をかけれた時代とは違ってきていることを知る必要があります。
当時は代表のために時間を割くという作業はざっくり言えば『Jリーグ』との調整で済んでた話ですけど、『Jリーグ』との調整は今でもありますが、それより重要なのが『FIFA』が定める『インターナショナル・マッチカレンダー』。
このカレンダーの意味を解らない人もいるかと思いますので、ざっくり説明すると『インターナショナル・マッチカレンダー』に指定されている週に限れば選手は所属クラブに拘束されることなく自国の代表チーム活動に参加しても構わないと考えてくれてほぼ間違いないです。
逆に言えば『インターナショナル・マッチカレンダー』に指定されていない週は所属クラブに拘束されていると思ってください。
これはあくまで所属クラブと代表チーム間の話であって、選手個々においてそれぞれの所属クラブでの立ち位置が微妙に代表の活動にブレーキをかけてくることもあります。
以下に2022年1月に最終更新されている『FIFA』が定める『インターナショナル・マッチカレンダー』があります。
カレンダーじたいは2020~2024までの『インターナショナル・マッチカレンダー』になっています。
出典:https://www.fifa.com/international-match-calendars
2023年に限定すると『インターナショナル・マッチカレンダー』に指定されているのは以下の通り。
- 3/20~28(9日間)
- 6/12~20(9日間)
- 9/4~12(9日間)
- 10/9~17(9日間)
- 11/13~21(9日間)
上記とは別にAFC ASIA Cup決勝ラウンドが6/18~7/16に中国開催で予定されていましたが、中国が開催を返上しカタールでの代替開催予定となっています(詳細日程は未だ未定)。
6月~8月にかけては主要欧州リーグはオフシーズン、次シーズンまでの準備期間であったり、移籍期間でもあるので、ここでベストメンバーでの代表活動も難しい。
2023年でASIA CUPを除けば代表で活動できるのはトータルで45日間、この45日間には主要メンバーがヨーロッパから日本への移動時間も含まれるし、親善試合も組まれてきます。
言い換えると最近の男子A代表は親善試合のために集まるという状態で、インターナショナル・マッチ・デー期間に2試合行い、練習は試合の前後という具合ですからまとまった練習時間は本当に少ない。
代表監督に託された時間はクラブレベルで実績を残している監督に託された時間と比べることじたいが馬鹿らしいほどに少ないわけです。
それは1年間の話であって4年間あればとかいう議論もあるけど、4年間で選手の入れ替わりもあるし、戦術にはめ込むタイプの監督、さらに時間がない中で言葉の問題まである外国人監督にとってはまさに『ミッションインポッシブル』といっても言い過ぎとは思えないんですけど。
これはあくまで戦術にはめ込むタイプの外国人監督について思うことで、私が考える現日本代表監督に適した外国人監督はというと、解り易いところで例えると元レアルマドリー監督、元スペイン代表監督である『デル・ボスケ』みたいなタイプが適任であると考えています。
『デル・ボスケ』は2010年ワールドカップ南アフリカ大会でスペインに初の優勝をもたらした監督でもありますが、それよりも私の印象に残っているのは『レアル・マドリード』監督時代で、戦術的にはみるものがないものの『フィーゴ』、『ジダン』、『ロナウド』といったビッグネームとカンテラ出身者で構成されたチームを『銀河系軍団』と呼ばれるまでにまとめあげた実績、その後はワールドカップ優勝監督となったように代表監督に求められるスキルとはこういうものだと思う。
ちなみに『デル・ボスケ』が『レアル・マドリード』監督時代(1999/11~2003)の所属選手は以下表になりますけど、これだけの選手がいれば戦術なぞ不要にも思えるけど、これだけの選手ばかりだからこそチームとしてバラバラになりかねないし、チームとしてまとめあげるのは至難の業にも思えます。
当時の『レアル・マドリード』よりもさらにビッグネームばかりの『パリ・サンジェルマン』が『チャンピオンズリーグ』で結果を残せてないことを鑑みると、派手さはないが『デル・ボスケ』の手綱さばきがより際立っているように思えます。
No | 1999-2000 | 2000-2001 | 2001-2002 | 2002-2003 | 2003-2004 |
1 | イルクナー | イルクナー | カシージャス | カシージャス | カシージャス |
2 | サルガド | サルガド | サルガド | サルガド | サルガド |
3 | R・カルロス | R・カルロス | R・カルロス | R・カルロス | R・カルロス |
4 | イエロ | イエロ | イエロ | イエロ | - |
5 | サンチス | サンチス | ジダン | ジダン | ジダン |
6 | レドンド | エルゲラ | エルゲラ | エルゲラ | エルゲラ |
7 | ラウール | ラウール | ラウール | ラウール | ラウール |
8 | マクマナマン | マクマナマン | マクマナマン | マクマナマン | ボルハ |
9 | モリエンテス | モリエンテス | モリエンテス | モリエンテス | - |
10 | シードルフ | フィーゴ | フィーゴ | フィーゴ | フィーゴ |
11 | サビオ | サビオ | サビオ | ロナウド | ロナウド |
12 | イバン・カンポ | イバン・カンポ | イバン・カンポ | トテ | - |
13 | ビサーリ | セサール | - | セサール | C・サンチェス |
14 | グティ | グティ | グティ | グティ | グティ |
15 | エルゲラ | ジェレミ | ジェレミ | - | ラウール・ブラボ |
16 | - | F・コンセイソン | F・コンセイソン | F・コンセイソン | ヌニェス |
17 | ドラード | ムニティス | - | ミニャンブレス | ミニャンブレス |
18 | カランカ | カランカ | カランカ | ポルティージョ | ポルティージョ |
19 | アネルカ | トテ | - | カンビアッソ | カンビアッソ |
20 | バリッチ | セラデス | セラデス | セラデス | - |
21 | ジェレミ | ソラーリ | ソラーリ | ソラーリ | ソラーリ |
22 | カランブー | リベラ | パボン | パボン | パボン |
23 | ジュリオ・セザール | ジュリオ・セザール | ムニティス | - | ベッカム |
24 | - | マケレレ | マケレレ | マケレレ | - |
25 | カシージャス | カシージャス | セサール | - | セサール |
26 | - | - | ミニャンブレス | C・サンチェス | - |
27 | - | パボン | C・サンチェス | - | - |
28 | - | - | - | - | オラジャ |
29 | - | - | - | ルベン | ルベン |
※1999-2000はシーズン途中に前任の『トシャック』から引き継ぎ、2002-2003シーズンで契約終了、2003-2004シーズンは『ケイロス』が指揮を取っています。
※赤フォントは対象シーズンの新規加入選手
下記表はリーグ戦、CLでの成績
No | 1999-2000 | 2000-2001 | 2001-2002 | 2002-2003 | 2003-2004 |
リーグ | 5位 | 優勝 | 3位 | 優勝 | 4位 |
CL | 優勝 | ベスト4 | 優勝 | ベスト4 | ベスト8 |
当時を思い出すと『デル・ボスケ』は戦術面では特徴らしい特徴もなく、ただビッグネームを集めただけのチームということもあってチームとしてどうなの?個性がぶつかりあって崩壊するのではと思ったものです。
事実過去にはそんなチームも多数見てきてたし・・・
私はどちらかというと『バルサ』>>『レアル』なので内心ほくそ笑んでいたものの、
結果的には長きに渡った『レアル・マドリード』低迷期から復権への礎となったのですからその手腕は素晴らしいし、私自身当時は戦術こそチームを強くすると思ってもいましたからかなりの衝撃でもありました。
彼が辞めた後、リーグ戦での優勝は『カペッロ』が就任した2006-2007シーズまで待つことになるわけですから、振り返ってみるとやっぱ凄い。
『デル・ボスケ』に関しては言えば、ワールドカップ優勝後もスペイン代表監督を歴任しますが2012年のEURO2012で優勝、2014年ワールドカップブラジル大会ではグループリーグ敗退、2016年のEURO2016では決勝ラウンド初戦で敗退後、その職を辞します。
スペイン代表が2010年ワールドカップ優勝、2012年EURO2012優勝から緩やかに下降線を描き『デル・ボスケ』はその職を辞しますが、これはスペイン代表のタレントの高齢化、スペイン代表がそのピークレベルを維持できるだけのタレントが育たなかったことが原因であり、『デル・ボスケ』に責任はないと思っています。
これが何を意味するかというと日本とスペインでは歴史が違いますけど、代表チームというのは育成の場所ではないし、世代によって列強国であっても浮き沈みがあるもので、日本代表に置き換えると2010年以降は安定してワールドカップでグループリーグを突破できるかどうかというレベルのタレントを輩出し続けていると考える。
(2014年は『ザッケローニ』がメンバーを固定して戦術の浸透を図ったことによって、対戦相手にも分析され易く、また新陳代謝が行われずに機能不全に至ったことや、コンディション調整が悪かったことなど負の要素が重なったことが原因??)
今回、日本代表において『戦術三笘』なんて見出しが話題になりましたけど、優勝したアルゼンチンは『戦術メッシ』、準優勝したフランスは『戦術エムバペ』、優勝候補筆頭であったブラジルも長きにわたって『戦術ネイマール』(今回は戦術ネイマールにプラス・アルファがあり優勝候補筆頭だったわけだが、プラス・アルファは戦術論ではなく新戦力の台頭によるもの)、代表チームというのは稼働時間の少なさもあいまって強豪国でもそういうもんです。
日本が世界と戦うために個で叶わない部分は戦術でという発想はあくまで、戦術論に責任を負わせてるというか転嫁させてるだけであって、代表という限られた時間、とくに海外組が多数を占める現状では戦術論という逃げ道は閉ざされつつあると思う。
という意味で『戦術三笘』というのは、代表国同士が戦うワールドカップの舞台においては日本代表がより世界に近づいたのではと思ったりする次第です。
今回は『三笘』選手の名前だけがひとり歩きしている感はあるものの、『堂安』選手、『遠藤』選手、『久保』選手などなど個が輝きながら、それぞれに主張し合ったすえにチームとして綻びかけた時に手綱を引いて上手く導いていくことが、これからの日本代表監督に求められる資質だと思うのが・・・いかがなもんでしょ?
選手個々も己の主張が正当性を帯びるほどにそれぞれのベースとなるステージでより高みを目指して成長していけば近い将来、とりあえずベスト8という壁は乗り越えられると思っているし、主役はそもそも選手であって監督ではないです。
そもそも代表監督って選手より偉いんですかね?
クラブレベルで名将と言われる監督は数多いますけど、代表監督で名将と言われるような人はパッとは浮かんできません。
それは前述したようにどの国でも世代によって浮き沈みがあって列強国であればワールドカップを2大会連続優勝だったり、サッカー新興国であれば2大会連続で好成績へ導けてるような監督がいないから、言い換えれば監督の手腕ではなくて選手の質によって代表監督の評価が左右されるから印象に残らないような気がします。
あえて挙げるとしたら前述の『デル・ボスケ』と(手腕以外のインパクトが大き過ぎて監督としての評価がまともにされていない)『ヒディング』くらいですかね。
世の中では『メッシ』や『エムバペ』は知ってても、アルゼンチン代表監督やフランス代表監督を知らない人のほうが圧倒的に多数です(笑)
また極端な話ですけど、世界で戦うには世界を知る監督が必要だとか言いますけど、代表監督が世界を知る必要なんてないんじゃないかとさえ思えるわけですよ。
主役は選手であって、選手が世界を知る必要は絶対にあるんだけど、監督が世界を知る必要はないんじゃないですかね?
世界を知る選手の手綱を上手く握れればいいだけで、世界を知る選手の手綱を上手く握れる条件として世界を知っている監督ってなるんでしょうけど、それは監督と選手の信頼関係の問題であって、世界を知っているからといって選手と信頼関係を築けるわけではないのだから。
『ハリルホジッチ』というとっても身近な例もあるわけだし、ちょっとそれますが、いまでもたまに日本代表関連で『ハリルホジッチ』のニュースがあると、スポンサー云々であーだこーだってのが慣例化してますけど、サッカーファンはもちろん大切だけど、日本サッカー界(JFA)というピラミッドを金銭面で支えてくれているのは紛れもなくスポンサーであって、スポンサーなしでは男女を問わずすべてのカテゴリーの選手育成、審判育成などなど日本サッカー界全体が機能不全になり兼ねない。
過去には日本サッカー界全体を考えてくれてた外国人監督もいましたけど、『ハリルホジッチ』のように自らのキャリアだけしか考えてない人物も世の中にはいるし、選手との信頼関係はもちろんのこと協会との信頼関係も必要。
オファー時点でそういうところも協会が見極めれば済む話ではあるんですけどね。
『森保』さんがベストではないと思いますけど、カタールでのサッカー日本代表チーム(ファミリー)を見る限り、現段階においては『最高のベター』だと思う次第。