sugarless time

甘く切ない80年代、甘くない現在の興味のあること中心に綴ります。

『一刀斎夢録:浅田次郎』を読み終えて

前説

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出典:文春文庫『一刀斎夢録 上』浅田次郎 | 文庫 - 文藝春秋BOOKS

出典:文春文庫『一刀斎夢録 下』浅田次郎 | 文庫 - 文藝春秋BOOKS

 

『一刀斎夢録』は2013年に発表された『浅田次郎』さんの作品、タイトルになっている『一刀斎夢録』は解り易く言い換えれば『一刀斎』の『夢録』になります。

 

『一刀斎』といえば少なからず歴史に造詣がある人なら戦国時代から江戸初期の剣客である『伊東一刀斎』を思い浮かべると思います。

ja.wikipedia.org


浅田次郎』さん作品は何冊かは読んでいて好きな作家のひとりなんですけど、『一刀斎夢録』のタイトルをみて戦国時代から江戸期にかけての剣客・剣豪『伊東一刀斎』の話なんだろうと勝手に思い込み、いわゆる剣の道とか剣の真髄とか精神世界に踏み込んでいく剣客・剣豪ものをあまり読まないこともあり長年手に取ることはなかったのですが・・・

 

当初2020年公開予定であった『るろうに剣心 最終章』が2021年4月に二部作のうちの一作目『The Final 』が公開され劇場にて堪能。

www.sugarless-time.com

 

2020年公開予定だった『るろうに剣心 最終章』が2021年に延期となった同じ時期に公開延期となり行方知れずだった『燃えよ剣』もやっとここにきて2021年10月15日公開が発表されました。

moeyoken-movie.com

 

楽しみにしていた映画が観れなくなった一年前に、もっとも利用頻度の高い近くのブックオフでたまたま見つけた『斎藤一』作品について投稿。
※『斎藤一』は『るろうに剣心』にも『燃えよ剣』にも登場します。

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上記投稿を書いている際に『一刀斎夢録』が『斎藤一』ついての作品であることを初めて知ったのですが諸事情により本を読む時間が減少し、また読もうとしていた本のストック消化もできないこともあって、積極的に『一刀斎夢録』を読もうとも思えず、そもそも入手しようとも思わなかったのですが・・・

 

るろうに剣心 最終章』公開を間近に控え、急に読みたい欲求にかられ、いつも利用するブックオフに在庫がないのを確認後、すぐに『ブックオフオンライン』で注文し、ここにきてやっと読み終わったのでレビューです。

www.bookoffonline.co.jp

 

ちなみにブックオフオンラインでは1500円未満は送料が発生しますけど、店舗受取なら110円(税込)から利用できます。

 

概要

時代は大正元年近衛師団で随一の剣の使い手である梶原中尉も全国武道大会で五連覇を成し遂げた警視庁剣術指南榊警部には勝つことが出来ずにいた。

 

その榊が剣の師と仰ぐのが『藤田五郎』こと『斎藤一』。

 

榊に勝つべく梶原が『藤田五郎』宅を訪れ、連夜に渡って『斎藤一』が語る幕末から現代(大正元年)までの自らの回想を通して榊に勝つ術を見出すことができるのかという作品。

 

斎藤一』の簡素な経歴は以下でも解ります。

www.sugarless-time.com


もうちょっと詳しく知りたければウィキペデイアで知れると思います。

ja.wikipedia.org

 

レビュー

ちゃんとしたレビュー 

『一刀斎夢録』のレビューについて詳しくまとめて確認するのであれば、こちらをご参照してください。

bookmeter.com

bookmeter.com

 

レビューのようなもの

まずは『一刀斎』ですよ、これは読み始めてすぐに解ったのですが『斎藤一』を逆さに読んで『藤』を音読みにして同じ音読みの『刀』に充てていたんですね。

これはまったく気付きません、『斎藤一』関係の作品はそこそこ読んでいますし、資料などもwebで確認できるものはそこそこ見ていますけど『斎藤一』イコール『一刀斎』というものは見たことがないので『浅田次郎』さんの創作のような気がしますけど、それにしてもうまいと唸ってしまいました。

 

前述した剣豪『伊東一刀斎』にもあやかっていると思えるし、これだけで『浅田次郎』さんの『斎藤一』愛を感じることができます。

 

さらに『斎藤一』という名前じたいも当人が勝手に名乗ったもので、そもそもの性は『山口』ですから、当人が『伊東一刀斎』の名前から『斎藤一』に改名したのではとさえ思えてくるんだけど、それを証明するような資料ももちろんございません(笑)

 

ちなみに順不同ですが『斎藤一』、『藤田五郎』、『山口二郎』、『山口一』、『一瀬伝八』は同一人物です。

 

そして2011年に発売した『一刀斎夢録』は『浅田次郎』さんの新選組三部作の三作品目、一作目、二作目は以下の通りでそれぞれ映像化されているので知っている人も多いと思います。

壬生義士伝 [DVD]

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  • 発売日: 2003/06/25
  • メディア: DVD
 

  

 

今回読み終わったことで『浅田次郎』さんの新選組三部作は読破です(笑)

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この作品の軸はなんといっても『斎藤一』の回想(夢録)、新選組時代から戊辰戦争西南戦争までの語り部分。

 

歴史小説というのは史実に基づいて史実に残っていない部分を作者が創作するというものだが、『斎藤一』を主人公にした小説としてはもっとも長編と思われ、今まで世に出ている作品の多くは新選組時代に比重を置きすぎている感があるのに対し、新選組時代はもちろんだが戊辰戦争から西南戦争についても濃密に書かれていることが興味深い。

長編ではあるのだが、読み始めると読みたい欲求は止まらなくなる。

斎藤一』の回想を繋ぐように梶原中尉の日常描写があり大正という時代を垣間見ることが出来るのも絶妙です。

 

あまり書くと本編に入り込んでしまいますけど、明治天皇に殉じて自刃した『乃木希典』評であったり、明治10年の西南戦争では明治政府への反乱の旗頭でありながら明治31年に建立された上野の『西郷隆盛』像についてのことであったり、刀対刀の時代から兵器による無差別殺傷への時代変化であったりと『斎藤一』が語るものすべてが痛快極まりない。

 

その他にももっと衝撃的な内容もあるし、『斎藤一』の語りを借りて作者『浅田次郎』さんの近藤勇をはじめ新選組隊士達へのリスペクトも感じることができ、それは同時に『斎藤一』が語る新選組でもあり、敗者となった『斎藤一藤田五郎)』の生き様を通して新たな魅力を吹き込んだ本作は新選組ファンなら是非とも読むべき作品でもあり、新選組ファンでなくても幕末から明治という時代を教科書にある勝者の歴史ではなく敗者からみた歴史を堪能できる作品だと思います。

 

また、つい160年ほど前まで人と人とが対峙して刀で殺傷し合う時代があったこと、時代が移り変わり対峙もすることなく無差別に人を殺傷できる現代、『斎藤一』の名を借りた『浅田次郎』さんの想いも感じ考えさせられる作品でした。

 

6月4日公開の『るろうに剣心 最終章 The Beginning』、10月15日公開『燃えよ剣』前、特に後者が公開される前に読むことをお薦めする作品です。

 

 

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